そんなかんじで無頓着に録音だけはしてきたが、きちんと楽器を録ることは皆無。自分の演奏なんて、録ったら下手がバレるというのもある。ところがRoland Juno-106というシンセを手に入れて状況が変わった。そいつはスッゴくいろんな音を出してくれたので、たくさんの音色を同時に並べて曲をつくってみたくなったのである。(マルチ音源など存在しない)
はじめはカセットテープに録音してみた。しかしすぐにそのノイズの大きさと音質の余りの変わりように愕然とする。それまでノイズというものは当然あるものと気にしていなかったが、ヤツが明らかに邪魔者と感じた瞬間であった。
もしあの時ノイズなど気にせずそのまま突っ走れば、宅録マニアを経てエンジニアの道へ一直線だったかもしれないが、すでに世の中にはMIDIのシーケンサーというものが登場していたので、オレはあっさりカセットを捨てた。
シーケンサーを使ってはじめの頃は作ったものを録音する必要は無かった。
打ち込んだ曲は、データ保存すればいつでもリプレイのはずが、気がつくとシンセが2台に増えミキサーとエフェクターを使うようになり立ち行かなくなった。ミキサーでバランスをとったものは、録音しておかないと二度と同じバランスにならない。
さて困った。過去に葬ったカセットには今更戻れないし。。。と、いろいろ悩んで思いついたのがビデオデッキ。運良くHi-Fi仕様だったのもあってこれは結構よかった。一本のテープに短い曲を作ってはちょこちょこ録っていた。これもβでさえなければ、今でも聴けたのに。
高校に入って突然オレに曲を作ってくれという友人が現れる。OKしてはみたものの、それまで作ってたのは全てインストの曲だったのでこれには困った。とりあえず彼には一発録りで何度も歌ってもらって急場をしのいだが、そこで初めてマルチトラックのレコーダーが欲しいと思った。
大学で上京したころ、Korg T1というマルチ音源でエフェクターまで内蔵しているキーボードを買う。
(ちなみにT1は今でも現役のマスターキーボードである)
それと前後して使いだしたMacとMIDIインターフェイスにはシンクロナイザー機能があったので、Vestax MR-66というカセットのマルチレコーダーを手に入れた。6トラックだから音声がシンク信号の影響を受けにくいと聞いていたが、静かな曲ではガビーというシグナル音がどっかで鳴ってる気がしてあまり好きではなかった。
といいながら歌やギターを録ってアレンジに加えたりと結構使ったな。カセットなのに倍速録音やdbxのおかげもあって音は意外なほど良かった。
DATの出現はずっと待ち望んでいたものだった。日経新聞で「次世代デジタルの鍵を握るフォーマット」「マルチの録音もできる」なんて記事を切り抜いてスクラップする程スゴく期待していた。むちゃくちゃ待たせてくれたあげく、やっと登場したDAT、カセットデッキほど種類も無く値段も安くならない。
Sonyで44.1kHzで録音できるやつが出た時にマスター用に買った。さぞかしイイ音で録れるのだろうと同じSonyのDATテープで試したら、いきなりデジタルエラー出まくり!買ったその日に、自分の曲がグギーガギーと変換されるのを聴いて一気にDATが頼りなくなった。その後デッキを交換して他社のテープを使ったらトラブルはなくなったが、一度失った信頼は回復が難しいものである。
今思えば、あれは既にテープ時代の終焉の序章だったんだな。
2004/11/3
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