最初で最後の親孝行

親父は「謡」をやっておりまして(結婚式の”たかさごや〜ってやつ)自分で謡ったのをまぁ山ほどカセットテープに録りためておりました。その親父が亡くなったとき、さてこれをどうしたものかと途方に暮れながらもその中の一本を初めて聴いたんです。そこには「謡」なんて興味無かった私に、たしかに訴えかけるものがあったんでしょう。

「これは形にして残そう」と早速実家からカセットテープ持ち帰って聴いたところがさぁたいへん。なにしろ親父がカセット付属のマイクで拾っただけのもの。録った環境もばらばらで全くまとまりつかない状況だったのです。

録音状態の良い物を選び出す作業から始め、ノイズを減らしつつ声の明瞭度をEQで上げ、少々のリバーブなんぞを足していくころには、ほぼその謡の一節は頭に入ってしまっているといった感じ。それにしても、普段の音楽制作のツールがこういうことに役立つとは私自身考えてもみませんでしたけど。

とにかく〆切は四十九日。そこに間に合わせるべく作業は続き、ついに完成した2枚組みCD「礼」は親戚一同を初め、受け持っていた生徒さん方にも大変喜ばれたようで、最初で最後の親孝行かもなという気持ちでした。

shoichi

2002/6/4

ピアノは好きですか?
文化人類学

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